2013/03/09

高崎旧井上房一郎邸 その1~アントニン・レーモンド自邸公認コピー作品~

高崎市景観重要建築物指定第一号旧井上房一郎氏の自邸です。

いつも行ってからあれこれ調べるのですが、手元に以前買ったまま放置してあったこの本。


2013年現在、取り壊しがウワサされている神奈川県立近代美術館(坂倉準三氏設計)が2008年に、レーモンドに関する展示会をやったときに集めた資料を本にしたようですが・・・

amazonでは、すでに中古品しか売ってませんね。

この本に、この井上邸の原図、レーモンド作の「笄町の自邸」の図面が掲載されていました。

当のレーモンド設計事務所アーカイブからも一部図面が。
http://www.raymondsekkei.co.jp/archives/index.html

ということで、レーモンド自邸、井上邸と分けて記録しときます。



人が描いた図面を借りて建てる、ということが起きるのも、とても面白い現象ですが。

レーモンド作の夏の家(軽井沢)が、コルビジェとの間で模倣だなんだ、ということでひと騒動のうえ和解した、という一連のことを知ってて、井上氏はあえてお願いしたのかどうなのか。


ともかくも、レーモンドが事務所として使っていた建物の図面を借りて、井上氏が自宅にしたそうで。

井上氏のご自宅が火事で消失したから、レーモンドに図面を借りてよいか打診したそうで。

本人快諾。

晴れて建築、となったそうなのですが。


井上房一郎という方は、「高崎のパトロン」というのが私の中では認識。

ブルーノ・タウトが日本に滞在したときの世話をしたり、レーモンドに直談して群馬音楽ホールの設計を頼んだり、高崎観音を造ったり・・・


ブルーノ・タウトが日本にいられたのも、井上氏が就職の世話をしたから、というのがあり。

2008年?だかに会社自体はなくなっているそうですが、井上工業という建設会社は、高崎の発展にかなり寄与してたそうです。

で、高崎の史料的にも大事な井上邸、高崎市が景観重要建築物として保存し美術館の一部として公開することになったそうで。

そんなこんな程度の知識で行ってきたのですが。


まずは南側の外観から。

上品な木造・・・程度でした、最初の印象。

こちらは、レーモンド夫婦お気に入りのPATIO部分。
先の本の表紙にもなっています。


ガラスに見える部分は、後付けのプラスチック?だそうで。
納まり部分が腐りそうでちょっと気になる感じでしたが・・・

上記の本、朝ごはんを食べるレーモンド夫妻の写真には、確かに屋根材はありません。いわゆる野外。


井上邸では、南向きのPATIOをはさんで、東側がリビング(ハレ)、西側が生活部分の和室、台所、お風呂など(ケ)。PATIOは少し東寄り。

レーモンド邸では、配置が逆で、西側がリビング、東側が生活部分。しかも、PATIOの位置は、きれいにド真ん中。

井上氏が丸々図面をコピーしたわけではなく、さらに工夫を加えていることが伺えます。


この家の特徴として、軒が深いこと。レーモンド邸より、井上邸の方が深いそうです。

あと、雨どいがない。さすが。

外周で雨が落ちるところは、全て砂利で受けてます。
夏の名物、雷と夕立のすごい高崎でも、砂利周辺の水があふれることなく大丈夫なんでしょう。いいなぁ。京都のお寺みたい。


タタキ、雨を受ける砂利、そしてお庭の玉石です。すてき。


南西側からの眺め。


こちらは北側のアプローチ。
ちょうど玄関となっている部分が、廊下をはさんでPATIOになっています。


北側の軒は浅め。
縦の板張りと土台との納まりも見事。美しい。

井上邸で玄関になっている部分は、北側にあったレーモンド事務所のスタジオと外廊下でつながってました。


これぞ、の風景。
コルビジェの推奨した、第五原則。
水平連続窓、ってやつです。

雰囲気としては、東京都小金井公園にある前川國男自邸。
あの家の北側の風景とそっくり。

さすがに木造和モダン。

すてきでした。


最後は、南側のお庭から。

煙突が東西に二つ、切妻の感じがよくわかります。

その2 につづく

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